日本の伝統的なドライフルーツである干し柿。各地で作られる干し柿ですが、宮城の山あいで130年続く干し柿をご存知でしょうか。表面の歯ざわりと中身のゼリー状のバランス、柿の風味が際立つ『やしまやの干し柿』は、知る人ぞ知る逸品です。本記事では、干し柿の季節や栄養、生産地、アレンジレシピ等の基本的な情報から、『やしまやの干し柿』がどういった干し柿なのかをご紹介します。
日本で古くから親しまれる伝統的なドライフルーツの干し柿。晩秋から冬場にかけて、渋柿を干して乾燥させる事で、甘みが凝縮されます。干し柿の歴史は、平安時代の文献に見られるほど古く、日本人の貴重な甘味として親しまれてきました。今では数えきれない程スイーツが豊富にありますが、毎年干し柿のシーズンを楽しみにされる方も多いのではないでしょうか。干し柿は11月頃から出回り始め、12月に出荷の最盛期を迎え、3月頃には店頭では見る機会が少なくなります。干し柿の旬は、産地にもよりますが、12月から1月と考えていいでしょう。
柿にはもともと豊富な栄養が含まれます。干し柿は、食物繊維が豊富な上、水分が抜けてビタミンAやβカロテンが増えることで、血流の促進や整腸効果に優れています。昔から干し柿を食べると、二日酔いの防止や高血圧の予防につながるとも言われています。様々な作用が期待できる干し柿ですが、気を付けなければいけない点も。100gあたりのカロリーが、柿が60kcalなのに対して、干し柿は276kcalとかなり高めです。柿の4倍以上のカロリーがあるので、美味しいからといって、くれぐれも食べ過ぎにはご注意を。
日本各地で作られている干し柿ですが、生産地としては福島県と長野県が有名です。生産量で見ても福島県と長野県で全体の半数以上を占めるほどの二大生産地となっています。また、銘柄として知名度の高い市田柿とあんぽ柿は、それぞれ長野県と福島県が名産地です。この二大勢力が目立つ干し柿ですが、山陰地方で栽培が盛んな西条柿の干し柿や、山形県上山市の紅干し柿など、各地域の気候風土のなかで作られる、それぞれに個性の違う味わいを楽しめるのも干し柿の魅力です。
干し柿と言っても、あんぽ柿やころ柿などの呼び名もあり、意外とその違いが分からないという方も多いのではないでしょうか。基本的には、皮を剥いた柿の果実を乾燥させたものが干し柿です。あんぽ柿と、ころ柿の最も大きな違いは、出来上がりの水分量にあります。あんぽ柿は50%ほどの水分を含み、トロっとした食感が特徴です。ころ柿は、漢字で枯露柿と書くように、あんぽ柿よりも水分を抜いた干し柿です。水分量が25〜30%まで干し上げるため、ねっとりとした歯ざわりで濃い味わいになります。干し柿には、産地や生産者で様々な作り方がありますが、柿の品種や乾燥の度合いで食感や味わいが異なります。どれが良いという事ではなく、ご自身のお好みに合った干し柿を、食べ比べして探すのも楽しいですね。
ご家庭で干し柿を作る際には、渋柿と紐さえあれば、自家製のドライフルーツを作る事ができますが、作り始めるまでに、押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。
ポイント1)甘柿ではなく、必ず渋柿を使う点です。甘柿はカビやすく、渋柿の方が実は糖度が高いため、干し柿づくりは渋柿一択です。
ポイント2)しっかり熟した渋柿を用意することが大事です。柿の葉っぱの部分が黄色くなっていれば、熟した柿の証しになります。
ポイント3)カビの発生を防ぎ、乾燥を進めるために、寒く乾燥する時期になってから作るようにしましょう。
この3点をまずは押さえて下さいね。
実際に作る時は、ヘタを残して皮を剥き、準備した紐の両端に柿のヘタの部分を結びます。カビの発生を防ぐ殺菌のために、沸騰したお湯に5秒ほどサッと柿をくぐらせます。熱湯にくぐらせる以外の殺菌方法には、焼酎やブランデーに浸す方法があります。焼酎やブランデーに浸しても、干し柿になるころにはアルコール分は無くなりますので、熱湯でやってみて上手くいかなかった方は、こちらの方法を試してもいいかもしれません。
ここまでの下準備ができたら、次は干す作業です。干し柿づくりの天敵となるカビを発生させないためには、まず場所の用意から。場所は軒下などの雨をしのげて、日当たりと風通しの良いところを選びましょう。干す時には、カビの発生を抑えるために、柿同士がくっつかないように吊るします。カビが発生してないかを確認して、1週間程度して外側が硬くなったら、表面と中側を混ぜる様なイメージで柿を優しくもみ込みます。その後、白い粉が表面に見えてきたら、甘く仕上がってきているサインです。この白い粉は柿霜(しそう)と呼ばれ、カビではありません。柿の糖分が結晶化して表出したものです。干し始めて2週間から3週間程度で食べられるようになりますので、お好みの硬さでお召し上がりください。
数ある干し柿の中でも今回ご紹介するのは、宮城県丸森町の「いなか道の駅 やしまや(以下、やしまや)」で作られる『やしまやの干し柿』です。やしまやは丸森町の耕野地区という雄大な阿武隈川が流れる、山あいの地域で、代々地域の生活を支える商いを行ってきました。現在の店主八島哲郎さんが4代目となる歴史あるお店です。やしまやの干し柿は初代から始まり、なんと今年で130周年を迎えます。干し柿づくりは年に一度。その130回繰り返されてきた中で、徐々に作り方を改善し、今の『やしまやの干し柿』があります。
やしまやには根強いファンが多く、シーズンになると、わざわざ遠方から『やしまやの干し柿』を求めて山あいの商店に人が訪れます。これまでは、「お客さんを大事に、つながりを大事に」というやしまやのポリシーのもと、そのほとんどが、顔が見える直売でのみ販売されていました。しかし、この度はやしまやでしか購入できなかった『やしまやの干し柿』を、あまねの通販でも皆さまにお届けできる事になりました。
やしまやの柿畑は、地域の他の生産者と共同管理する2haと広大な面積です。先代が柿の栽培面積を増やしたのに対して、八島さんは、自分の役割は干し柿の価値を上げることだと言います。以前までは干し柿を安価な値段で販売していたそうです。なぜかと言うと、他の生産者も皆がそうしてきたから。ところが、昨今の原材料の高騰もあり、このままの値段だと原価割れしてしまうのではないかという危機感がありました。それは、代々受け継がれてきた干し柿が、商売として成り立たなくなる事を意味します。
八島さんは他の地域で行われる販売会や展示会への出展や、パッケージのリニューアル等を積極的に行い、日々干し柿の魅力を発信しています。今後は働き手が減っている耕野地区で栽培面積を増やすことなく、干し柿の価値を上げていくこと。そして、その価値を遠くの方にも届けたいというのが八島さんの想いです。
干し柿の価値を上げるためには、前提として干し柿がいいものでなくてはなりません。八島さんは干し柿の品質に並々ならぬこだわりがあります。良い品質の干し柿を作るには、スタートラインとなる良い渋柿が欠かせないと言います。ところが、温暖化の影響によって、年々良い渋柿を作るのが困難になっているそうです。病気が増えたり、遅霜が発生する事でつぼみがダメになってしまう事が増えています。それでも柿畑の手入れを欠かさずに、納得のいく良い渋柿だけを厳選して、毎年『やしまやの干し柿』が作られます。
馴染みのある干し柿ですが、意外とその作り方は知られていません。スタートラインとなる渋柿の作り方から、『やしまやの干し柿』ができるまでを八島さんに余すことなく教えていただきました。
やしまやの干し柿づくりは、大きく分けて7つの工程があります。
もちろん一つ目は渋柿の栽培です。糖度が高く色づきのいい渋柿をつくるために、枝の剪定、肥料散布、草刈り、殺菌作業、粗皮削りを行います。原材料が良い品質であること、そのためには柿の手入れが大切です。
次に、ちょうど良く色づいた渋柿を、2回〜3回に分けて収穫します。それから一週間ほど倉庫で追熟させます。渋柿がおでこの額くらいの硬さになったら、収穫した柿の皮を一気に剥きます。この皮むきを出来るだけ短くするのがポイントのため、現在は機械を導入してスピード化しています。なぜ皮むきを最短で行うかというと、柿の追熟が最適になる時と、寒くなるタイミングをピタッと合わせる必要があるためです。畑の柿が収穫のタイミングを迎えても、皮を剥くタイミングで気温が下がるとは言い切れない上に、追熟の期間も気温や天候に左右されます。それを見越して収穫から皮むき時期を想定するのは、経験を重ねた今でも難しいと言います。
無事に皮むきが終わると、小さい部屋で空気を遮断し、柿を硫黄で燻蒸します。柿表面の1cmほどに硫黄を浸透させることで、酸化防止(黒くなるのを防ぐ)と殺菌(カビの発生を防ぐ)の効果があります。燻蒸された柿を、サイズによって間隔を変えながら、柿ばせと呼ばれる柿の乾燥場で干します。開閉式となっている壁面を、その日の天候や柿の状態に応じて、扉の開け具合によって湿度を調整します。そうして、『やしまやの干し柿』は、噛み応えのある表面と、中身のゼリーのバランスが良くなる1月上旬にようやく出荷を迎えます。
以下に、八島さん直伝の柿の木の手入れと、干し柿作りの作業をまとめますので、ぜひ干し柿づくりの参考にしてください。
そんな『やしまやの干し柿』は、お客様にとても好評です。食べた方からは「他の干し柿が食べれなくなった。」「やしまやの干し柿を食べて、干し柿が食べれるようになった。」との声が。とにかく他の干し柿との違いがはっきり分かるほど柿の風味が違います。食べ慣れたお客さんは、銘柄を伏せて食べ比べても、どれが『やしまやの干し柿』か分かるそうです。気になる食感は、あんぽ柿と枯露柿の中間ほど。八島さんによると、どの食感がいいという事ではなく、あくまで好みによるとの事ですが、中のトロっとした舌触りと表面の弾力がちょうどバランスした食感はぜひお試しいただきたい一粒です。
干し柿には賞味期限という明確な美味しく食べられる期間はありませんが、せっかくの美味しい干し柿ですから、長く美味しい状態をキープしたいですよね。干し柿を保存する場合は、新聞紙やキッチンペーパーに一粒ずつ包んで、風通しのいい冷暗所で保管します。干し柿が傷む前に、保存から3日を目安に食べきりましょう。
なお、暖房のきいた常温の部屋は、カビが発生しやすい環境のため早めに召し上がってください。食べきれない場合や、あんぽ柿のように水分が多い干し柿は、冷凍保存がオススメです。また、月日と共に乾燥が進み硬くなった干し柿は、表面をほんのり濡らして電子レンジで温めると、柔かくなります。乾燥の程度にもよりますが、硬くなってしまった場合には一度お試しください。
冷凍保存する場合は、約半年から1年程度は保存できます。せっかく頂いた干し柿が、食べきれずにカビが発生してしまったなんて事はありませんか。食べる分以外は、すぐに冷凍すると好きな時に美味しく食べれるようになりますよ。冷凍の場合は、乾燥しないようにラップで1粒ずつ包んで、チャック付きの保存袋に、空気ができるだけ入らないように入れておくのがポイントです。
そのままで美味しい干し柿ですが、意外と知らないアレンジレシピがあるのをご存知でしょうか。まずお試しいただきたいのが、ちょい乗せレシピです。切り分けた干し柿に、クリームチーズやバターを載せるだけで、お茶うけから小慣れたおつまみに大変身。ワインに相性抜群なのは言うまでもありません。クリームチーズと合わせる時は、薄くスライスしてミルフィーユ状にすると、変化のある食感も楽しめます。クリームチーズがない場合は、kiriと合わせても美味しいですよ。
郷土料理としては、奈良県の柿なますが有名です。大根とにんじんの酢の物に干し柿を加えたものです。奈良県の他にも宮城や山形、長野、愛知、静岡、広島、島根など各地の柿を使った柿なますが食べられています。おかずとしては天ぷらやサラダの具材、白和えとしてもオススメです。ドライフルーツなのでデザートの具材としても使い勝手がいいのが特徴です。アイスに添えたり、パウンドケーキの具材としても相性がいいので、ぜひお試しください。
如何でしたでしょうか。ここまでお読みいただいたら、『やしまやの干し柿』を食べてみたいとお思いの方も多いはず。しかしながら『やしまやの干し柿』の取扱いは、2024年1月上旬を予定しています。2023年は柿の不作によって生産量が例年の9割減となり、オンラインでの販売は断念いたしました。しばらくお待ちいただく事となりますが、どうかご了承ください。2024年の生産状況が見えてきましたら、こちらでもご案内いたします。
あまねとは『誰かと分かち合いたくなる、物語のあるクラフト缶詰』のサイトです。缶詰を販売するサイトとしてだけでなく、店頭で接客させていただくように、生産者や食材のストーリー、製造のこだわりを丁寧にお伝えしています。私たちが一からレシピ開発した手作り缶詰と、セレクトした各地の手作り缶詰をどうぞご賞味ください。あまねのTOPページはこちら。
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