青唐辛子の辛さの正体とは?研究でわかる仕組み|太良衛門「龍の尾」
公開日:2026年9月25日
青唐辛子を育てていると、毎年のように同じことを感じます。同じ畑の、同じ株から採った実なのに、1本ずつ辛さが違うのです。ひと口かじってほとんど辛くない実もあれば、思わず水に手が伸びる実もあります。
この「辛さのばらつき」は、農家の勘違いではありません。唐辛子の辛さについては、植物学・食品科学・神経科学の分野で研究が積み重ねられていて、辛さがどこで作られ、なぜ変わり、どうして私たちが「辛い」と感じるのかが、かなり詳しくわかってきています。
この記事では、宮城県角田市の自社農場「太良衛門」で青唐辛子「龍の尾」を育てる私たちが、研究でわかっていることを、できるだけやさしく紹介します。
宮城県角田市 自社農場 太良衛門
畑で育てた辛さを確かめる、青唐辛子「龍の尾」
太良衛門の畑で代を重ねて育ててきた独自の品種です。栽培期間中農薬不使用。
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辛さの正体は「カプサイシン」の仲間たち
唐辛子の辛さのもとは、カプサイシンを中心とした一群の成分で、まとめて「カプサイシノイド」 と呼ばれます。唐辛子の仲間(ナス科トウガラシ属)の果実が作る成分です。
カプサイシンには、水に溶けにくく、アルコールには溶けやすいという性質があります(農林水産省)。辛い料理を食べたあとに水を飲んでも辛さがなかなか引かないのは、この性質とも関係しています。
辛さは「種」ではなく「わた」で作られる
「唐辛子は種が辛い」と思われがちですが、辛み成分が多く含まれるのは、実の内側で種がくっついている白い部分「胎座(たいざ)」 と、実の中を仕切る「隔壁(かくへき)」 です(農林水産省)。一般には「わた」と呼ばれる部分です。
トウガラシの辛み成分の研究によると、カプサイシノイドは開花後20日あたりの果実の、胎座や隔壁の表皮細胞で作られます(田中義行「トウガラシの辛味成分に関する遺伝育種」)。
では、なぜ唐辛子だけがこの成分を作れるのでしょうか。2023年、京都大学などの研究グループは、辛み成分の材料を作る酵素の遺伝子(pAMT)が、辛み成分を作る場所である胎座だけで特異的に働いていることを示し、「トウガラシだけがカプサイシンを作る仕組み」の一端を明らかにしました(京都大学、学術誌The Plant Journal掲載)。
辛さを控えたいときは「わた」を取る
辛さの多くがわたに集まっているので、辛さを控えめにしたいときは、実を縦に割ってわたと種を取り除くのが効果的です。逆に、しっかり辛さを楽しみたいときは、わたごと使います。
「辛い」は味ではなく「熱い・痛い」の感覚
甘い・しょっぱい・すっぱいといった味は、舌の味を感じる仕組みで受け取ります。ところが辛さは、それとは別の仕組みで感じていることがわかっています。
カプサイシンを手がかりに、この仕組みを突き止めたのが、アメリカの研究者デヴィッド・ジュリアス氏です。ジュリアス氏らは、カプサイシンに反応する受容体(センサー)の遺伝子を発見しました。この受容体は後に「TRPV1」 と名付けられ、調べていくと、痛いと感じるほどの熱で働くセンサーであることがわかりました。
つまり、カプサイシンは「熱さ・痛みのセンサー」を直接刺激するため、実際には熱くないのに、口の中が燃えるように感じるのです。この発見は、温度や触覚を感じる仕組みの解明につながったとして、2021年のノーベル生理学・医学賞を受賞しています(ノーベル財団)。
同じ株でも1本ずつ辛さが違う理由
冒頭で触れた「辛さのばらつき」も、研究で確かめられています。
1.同じ条件で育てても、実ごとに大きく違う
アメリカでハラペーニョ(唐辛子の一種)を調べた研究では、同じ系統を同じ条件で育てても、開花後45日の実の辛み成分の量が、実ごとに0〜450ppmと大きくばらついていました。この研究では、実の日齢が進むほど辛み成分が増え、開花後40〜60日の実で高い値が出ています(Keyhaninejadら、学術誌Plant Science掲載)。
2.種が少ない実は辛くなりやすい
本来は辛くないシシトウが、ときどき辛くなることがあります。信州大学の松島憲一氏らの調査では、市販のシシトウ375本のうち辛味を感じたのは54本で、辛くない実は1本あたり平均105.0粒の種があったのに対し、辛い実は平均29.5粒しかありませんでした。人工的に種のない実を作ったところ、そのすべてが辛かったという実験結果も紹介されています。
3.暑さ・乾燥・土の状態でも変わる
同じ研究報告では、高温や乾燥といった栽培時の条件が、辛い実が出る要因として挙げられています。また、肥料の成分のうちリン酸は、少なすぎても多すぎても辛さが弱くなり、適量のときに辛み成分が最も多くなる傾向がみられたとされています(松島憲一「トウガラシ栽培における果実の辛味変動とその要因」)。
辛さがあるかないかは遺伝子で決まりますが、その強さは、ほかの遺伝的な要因や育つ環境によって変わります(田中義行、前掲)。唐辛子の辛さは、品種と畑の両方で決まる、ということです。
辛さはどうやって測る?
唐辛子の辛さを表す単位として有名なのが「スコヴィル値(SHU)」 です。もともとは、唐辛子の抽出液を砂糖水で薄めていき、人が辛さを感じなくなるまでの倍率で辛さを表す方法でした。現在は、機器分析(高速液体クロマトグラフィー)で辛み成分の量を測り、その値から換算する方法が使われています。
参考までに、農林水産省の資料では、タバスコソースが1,600〜5,000 SHU、チリパウダーが30,000〜50,000 SHUと紹介されています。
太良衛門の畑で、私たちが見ていること
ここまで見てきたように、唐辛子の辛さは「品種」と「育つ環境」の両方で決まり、同じ株の中でもばらつきます。だからこそ、辛さは畑でつくられるものだと、私たちは考えています。
青唐辛子「龍の尾」は、太良衛門の畑で代を重ねて育て続けてきた独自の品種です。畑では、その年の天気や土の状態を見ながら、栽培期間中農薬不使用で育てています。そして、朝に収穫した実を、その日のうちに出荷しています。
辛さは、研究でも「設計どおりにぴたりと揃う」ものではありません。それでも、品種を選び、畑を整え、実の様子を見続けることで、龍の尾らしい辛さに近づけていく。それが、私たちの言う「設計された辛み」 です。
龍の尾を育てる太良衛門のスタッフ
辛さと上手につきあうための科学
切るときは手袋を
カプサイシンが目や鼻の粘膜、皮膚に触れると、刺激によって涙や鼻水、痛みが出ることがあります(農林水産省)。青唐辛子をたくさん切るときは、使い捨ての手袋を使い、作業中に目や顔を触らないようにしましょう。
辛すぎたときは、水より牛乳
アメリカ・ペンシルベニア州立大学の研究では、辛いものを口にしたあとに7種類の飲み物を比べたところ、牛乳(低脂肪乳を含む)が最も辛さを和らげ、水や炭酸飲料、ノンアルコールビールは効果が小さいという結果でした。低脂肪乳でも効果があったことから、研究者は脂肪よりも乳たんぱく質が関係している可能性を指摘しています(Noldenら、2019年)。
たくさん手に入ったときの使い切り方は、
「生の青唐辛子を大量消費!常備菜・万能調味料レシピ」 で紹介しています。
よくある質問
Q. 青唐辛子のいちばん辛い部分はどこですか?
A. 実の内側の白い「わた(胎座)」と、実の中の仕切り(隔壁)です。辛み成分はここで作られます。種そのものではありません。
Q. 同じ袋の青唐辛子でも、辛さが違うのはなぜですか?
A. 唐辛子は、同じ株・同じ条件で育っても、実ごとに辛み成分の量が大きく違うことが研究で確かめられています。実の日齢や種の数、暑さや乾燥なども辛さに影響します。
Q. 辛くしすぎてしまったときは、どうすればいいですか?
A. 口の中の辛さには、水より牛乳が効果的という研究があります。料理の場合は、わたと種を取り除いた青唐辛子を使うと、辛さを抑えられます。
まとめ
・青唐辛子の辛さの正体は、カプサイシンを中心とした「カプサイシノイド」
・辛み成分は、種ではなく「わた(胎座)」と隔壁で作られる
・辛さは「熱さ・痛み」のセンサー(TRPV1)で感じていて、この発見は2021年のノーベル賞につながった
・同じ株でも実ごとに辛さは違い、種の数や暑さ・乾燥、土の状態でも変わる
辛さは、品種と畑の両方でつくられます。太良衛門の畑で育てた青唐辛子「龍の尾」の辛さを、ぜひ一度確かめてみてください。
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参考文献
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